「お」
声を上げた克己に眞清は振り返った。
「…どうかしましたか?」
「見ろよ、氷が張ってるぞ」
言いながら、パリンと靴先で割る。
海のあるこの辺は、冬になっても滅多に雪が降らない地域で、氷が張ることも珍しい。
「道理で寒いわけだよな」
吐く息は白い。
氷ばかりではなく、それも『寒い』のだと示している。
「早く春になりませんかねぇ」
ポソリ、と眞清は呟いた。
そんな眞清に対し「…冬生まれなのに」と克己は呟く。
「関係ないですよ」
暑いのも寒いのも好きではありません、と眞清は数度手を擦り合わせる。
「そぉか?」
克己は視界にまた一つ、薄氷を見つける。
踏んで割ろうと足早に進んだ克己に「コドモですか…」と眞清はぼやいた。