パリン、と軽い音を立てて氷は割れた。
道に張った薄氷は、薄い。
…簡単に、割れる。
「――…」
この脆さは、人の縁に似ている。
ヒビが入ればすぐに、亀裂が生じて…割れる。
軽くて、あっという間に。
「ねぇ」
呼びかけに瞬いた。
…誰もいないと思っていたから、少しばかり驚いた。
振り返ると、子供がいる。
「手が冷たいよ? 帰ろう?」
一度、二度、三度…瞬いて、子供を見つめる。
緑がかった、青い瞳。けれど、髪は黒。
「……常盤?」
問いかけると、少年は笑った。
「なぁう」と常盤の足元で猫が鳴く。
「――帰ろう?」
繰り返された言葉に瞬く。
…指先に触れた温もりが、じわりと広がった。